和牛界のレジェンド「見島牛」
今や世界の高級肉の牛肉の代名詞「WAGYU」。
その元祖である日本在来種は今となっては2種類しか存在しません。
その一つが山口県の見島で飼育されている見島牛(みしまうし)です。
もう一種類は、口之島牛(くちのしまうし)というトカラ列島の口之島で野生化した牛ですが、
見島牛のみ天然記念物に指定されています。
え?
なんで、わざわざ天然記念物に?!
他の和牛は?
実は、普段美味しい牛肉として大人気の和牛って、日本在来の純血種ではないんです。
現在流通している和牛は、もともと日本で農耕、荷役用に飼われていた牛に西洋品種のホルスタインを掛け合わせ、食肉用として品種改良された牛なんです。
日本在来種は、牛が食肉用として出回り始めた明治時代移行ほとんど改良されてしまい、
「たまたま島で飼われていた見島牛」と
「たまたま島で野生化した口之島牛」だけが
外来種との交配が全くない牛として生き残ったわけです。
野生化して結果的に純血が守られたのは、なんだかありそうな話ですが、いわば商売用に人間に管理されていたのに、純血が守られた見島牛は、まさに奇跡!
見島のご先祖様!ファインプレーですよ!
見島牛は1000年前、室町時代から役用として飼育されてきた歴史の長い牛です。
今では、約80頭ほど山口県の見島で飼育されていて、
観光の目玉となっています。
見島牛の住んでいる場所
そんな見島牛が住んでいるのは、山口県萩市の見島。
萩市から45km日本海上の沖合にある周囲25km、人口1060人ほどの小さな島です。
古くから、大陸との海上交易の拠点だったため約1000年の歴史があり、倭寇の子孫という方もいらっしゃるとか。
日本海ではありますが、対馬海流の影響で一年中温暖で、熱帯魚やサンゴ礁もみられるそうです。
観光スポットとしては、もちろん見島牛、ジーコンボ古墳群。
海釣り、スキューバダイビングもでき、渡り鳥の中継地としても有名です。
そんな見島、空から見てみると〜
なんと!
見事な牛の形!
偶然ですが、何か神がかったものを感じますね。
見島牛の特徴
ところで、日本在来種の見島牛とは、黒毛和牛とはどう違うのでしょうか。
見た目にはほとんど変わりませんが、しいていえば、見島牛のほうが頭の方の体が大きく、小尻な感じです。
黒毛和牛は前も後ろも均等な大きさです。
シルエットで表すとこんな感じ
はっきりと違うのは体格です。
見島牛 → メス 300kg程度 オス 700kg程度
和牛 → メス 450kg程度 オス 700kg程度
見島牛も雄牛は大きいのですね。
性格はおとなしく、おっとりしていますが、さすがに去勢していない種牛は周期的に気性があらくなるそうです。
肉質は、非常に優秀な霜降り肉!
しかし、天然記念物のため島内で牛肉として食べることはできず、繁殖用以外の去勢雄牛のみ、島外に食肉用として出荷されます。
今となっては市場に回るのは年間12頭程度、数頭しか牛肉として出荷がない年もあるという、
ものすご〜く高価な幻の超高級牛肉です。
天然記念物、見島牛のお肉は食べられます!
見島牛は出荷される。と、先程書きましたが、
天然記念物の肉を食べて良いの?!
とびっくりですよね。
実は「見島牛」天然記念物指定は見島という地域でかけられているもので、島外に出れば、食べても大丈夫なのです。
しかし、年間に数頭しか出荷されないなんて、到底食べる機会なぞない!と、
思うところですが、
見島牛は東京の高級レストランや、首都圏、山口県内の一部の飲食店で食べられます。
日本で唯一、見島牛の販売を行っているみどりやさんで、一般人でも買えます。
ネットで販売もしているのですが、数ヶ月に1回しか出荷がなく、
案の定、即「完売」になります。
見島牛のお値段は?
見島牛の気になるお値段は、肉の部位により違いますが、
最安部位で 400g・2,160円、
最高部位で 400g・15,120円
値段はめちゃくちゃ良心的!!!
(相当運が良くないと買えないですが。)
ただ、ステーキ肉のサーロインやヒレはサイトには見当たらず・・・
やっぱり幻のよう。
結局のところ見島牛のステーキは、販売元であるみどりやの直営レストランや都内では高級飲食店でしか食べられないようですね。
フレンチだとン万円のコースのメインが見島牛なのですが、そりゃあもう、最高に美味しいです!!
味の口コミを見てみると、やっぱり感動の嵐吹きまくりでした。
- 見島牛のお肉をいただきました。脂身はほどよく上品!肉の味が濃い!
- こんな肉食べたことない。貴重な体験してしまった。
- ハンバーグってとろけるんだ・・・。肉質が柔らか過ぎで何かの膜で巻いてあるらしい。
- 肉の味が深い旨味が凄い!何日も前に食べたのにまだ味が蘇ってくる〜
- 運良く手に入った!見島牛!嬉しすぎる(涙)
お肉ひとつでこんなにみんな幸せな気持ちにさせるとは、さすがレジェンド見島牛!
恐るべし・・・
見蘭牛もおいしい
とにかく、手に入りにくい見島牛ですが、見島牛を種牛にした掛け合わせのブランド牛が存在します。
それは、見島牛よりは安定的に出荷できるということで、これまた美味しくて人気です。
その中でもおすすめなのが、「見蘭牛」。
見島牛とオランダ産ホルスタインを交配させ誕生した、萩のブランド牛です。
和牛原種である見島牛の豊かな霜降りを受け継いで、その肉質は柔らかくて、芳醇な香り。
ステーキはもちろん美味しいのですが、牛肉自体の素材の良さが堪能できる網焼きもおすすめ。
サシが溶け出すその瞬間まで、さっとお肉を炙っていただく。
最高ですね〜♪
日本原種「見島牛」のこれから
ここで少し、まじめなお話を。
日本人が牛肉を食べるようになったのは、明治以降からです。
明治以前は、牛といえば、使役用であって、畑を耕すトラクターであり、荷を運ぶためのトラックでした。
見島牛もそんな普通の役牛でした。
その頃は、きっと牛は大切なパートナーのような存在だったのでしょう。
しかし、とうとう日本開国。
西洋人が牛肉を食べる様子を見て多くの日本人が気味悪く思う中、
次第に都市部を中心に牛肉を食べるようになっていきました。
最初は度胸試しで牛肉を食べてみたり。
ときに罰ゲームで食べてみたり。
そしたら、牛肉は意外と美味しかった!
「お前も牛肉食ってみろよ〜」
って感じでひろまったんでしょうね。
そんな中、最初に和牛の美味しさに気づいたのは、なんと、神戸の西洋人!
和牛の需要が高まるに連れ、もっと大きく、もっと美味しく、
たくさん牛肉を取るために、日本原種牛と西洋品種との交配が進みました。
そんな混沌とした時代を経て、見島で純血種が生き残っているだけで奇跡なのですが、
農業の機械化により、一時期は約30頭まで数を減らしてしまったそうです。
第二次世界大戦前までは、約600頭ほど飼育されていたものが、
わずか30頭にまで・・・
その後、天然記念物に指定されたことにより、
今では100頭弱飼育されて、保護されています。
しかし、ここへ来て、さらなる問題が!
牛の飼育農家の高齢化と後継者不足です。
見島牛以外の和牛の飼育農家でも同じ問題があるというし、ぜひ、国レベルで取り組んでいただきたいです。
見島牛について<おまけ>
そんなこんなお話ししてまいりました非常に貴重な牛、見島牛。
東京で見島牛のお肉を食べるのは超高級で難しいですが、見ることはできます。
どこで見られるかといいますと、皆さんおなじみの「上野動物園」です。
上野動物園の子ども動物園エリアに、見島牛がいます。
名前は「初春くん」。
2007年12月31日生まれ、翌年、見島を離れ上野動物園にやってきました。
今では立派な雄牛です。
ぜひ見に行ってはいかがでしょうか。